─────  鳥のうた2  ─────

2001/12/7


 冬至に向かって急に日が短くなってきたような気がするが、中央ヨーロッパ、40年ほど前にそこで暮したことがあるウィーンの今ごろは朝目覚めた時は前の晩、眠りについた時と全く同じ闇である。灯りをつけて顔を洗って身仕度をし、まるで夜の町を学校へ向う。
 1時限目が終るころ、9時半くらいになってようやく夜が明け始める。午後3時から3時半にはもう夜である。しかもこの季節の大半は毎日毎日、厚く低い雲に蓋われて明るい陽射しなど望むべくもなく、日中も薄暗く寒い。
 この町では煙突掃除人に出会うと良いことがある、幸運をもらえるという。2回冬を過した私は1度も出会った記憶がないが私がよほど不運だったのか、その頃既に煙突掃除の必要が減っていたのだろうか。
 ウィーンと言えば数え切れないほどたくさんの種類のお菓子とその美味しさで有名だが、クリスマス前、新年を控えたこの時期のお菓子屋さんのショーケースには小さい豚の頭(もちろんお菓子の)がずらりと並ぶ。豚の頭も幸運の象徴である。伝統を守っている家庭では食卓の真ん中に、でんと本当の豚の頭が載せられることもある。
 とてつもなく長い夜で、しかも昼も灰色の雲に閉ざされて暮しているから、たまに陽が射すとタイヘンである。お年寄りたちはこぞって公園へ出かけてベンチで日向ぼっこ、ご婦人方は寒さもなんのその、窓を大きく開けて顔を灼く。冬晴れなどという言葉もあって青空の続く東京で暮すと、ときどきヨーロッパの冬をなつかしむことがある。


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